環境や社会問題に関するキーワードとして、ここ最近SDGsと共によく話題になることの多いESG。「SDGsとは?目指す17のゴールと企業の取り組みについて」でも少し取り上げたこの言葉について、ガバナンスの重要性やSDGsとの違い・関係性など、もう少し掘り下げて解説します。
非財務情報である「ESG」
ESG(イー・エス・ジー)とは、企業の持続可能性を高める3つの重要な観点、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取った言葉です。これまで、企業へ投資する際の判断材料として利益率やキャッシュフローなどの財務情報が使われていました。しかし近頃では、経済的リターンから程遠いようにも思える「環境・社会に対する取り組み」、つまり“非財務情報”が長期的に企業価値を高めると判断される社会へと変化しつつあります。
企業におけるガバナンスの重要性とは?
ESGの3つの観点において、環境保護や社会貢献はイメージしやすいですが、企業統治(Governance)と聞いてもピンと来ないかもしれません。
Governanceつまりガバナンスは「統治・支配・管理」と訳され、ビジネスシーンでは「コーポレートガバナンス」と表現されることもしばしば。
このガバナンスが日本で注目されるようになったのは、不正会計、産地偽装、顧客情報漏洩といった企業の不祥事が相次いだ2000年代。というのも、企業統治がとれていないと不祥事が起こりやすく、コンプライアンス※違反を犯した企業として社会的信用を失い、企業価値が一気に下がる可能性を含んでいるから。企業の持続可能性を判断する要素として、ガバナンスが重要視されるようになったのです。
※コンプライアンス:企業などが、法令や規則、社会的規範や倫理を守ること。法令遵守。
急速に伸びを見せる「ESG投資」
ESGというキーワードが広がったのは、2006年のこと。当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が、世界の問題解決に貢献する企業へ投資すべきだという「国連責任投資原則(PRI)」を呼びかけたことをきっかけに意識の変化が起こり、多くの投資家・金融機関が投資にESGの視点を組み入れる「ESG投資」へ積極的に。企業の環境・社会貢献度が、投資する際の重要指標のひとつとなりました。
ESGに配慮した企業活動の例としては、児童を長時間働かせている農園や劣悪な環境で従業員を雇っている工場の原材料を使わない、などがあります。つまり、企業は自社農園や工場のみならず、下請け企業における環境配慮の方針や労働状況も把握することが求められるように。日本においても、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIへ署名したことを受け、ESGへ取り組む企業が急増しています。
ESGとSDGs の違い、2つの関係性
ここまで読み進め、「ESGとSDGs(持続可能な開発目標)は何が違うの?」と感じた方も多いかもしれません。どちらも環境や社会の課題解決に向け国連で提唱された概念ですが、そこには「過程」と「結果」の違いがあります。
まず、ESGは課題解決へのプロセス(過程)や考え方であり、対象は明確に定められていません。先ほどの例でいうならば、「児童が長時間労働を強いられる農園の作物は使用しない」ことになります。
対して、SDGsには17のゴール、169のターゲットがあり、対象が比較的明確になっています。同じく先程の例でいうと、SDGsのゴールのうち「8.働きがいも経済成長も」のターゲット8.7「2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する」に相当します。
最後に、2つの関係性についても整理しておきましょう。下図の通り、企業はGPIFから環境・社会貢献度の高さからESG投資を受け、それを元手にSDGsが掲げる社会的課題を解決することで企業価値が上がり、結果としてGPIFは投資リターンを受けることが可能に。このように、ESG投資とSDGsは表と裏の関係にあり、互いの事業機会と投資機会を生みだしているのです。
出典:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)ウェブサイト「ESG投資とSDGsのつながり」を基に作成
https://www.gpif.go.jp/investment/esg/