近年、Webサイトに求められる機能が多様化・複雑化しています。それに伴い、必要となる費用も大きく増加していることから、「実現性のある予算獲得」が円滑なサイトリニューアル成功へのカギとなっています。今回は、Webサイトリニューアル時に必要となる予算について、知っておきたいポイントを解説します。
なぜ、「実現性のある予算獲得」が重要なのか
Webサイトリニューアルにおいては、必須要件を網羅したRFPを作成し、それを元に発注先候補より見積もりを取ってから、「実現性のある予算」を算出・獲得することが非常に重要です。
というのも、「前回が〇万円だったから、今回もおそらく同程度だろう」「××機能の実装は安価でできるだろう」といった「だろう運転」が、予算の差異を生んでしまうからです。
<かかる費用とその算出方法を理解した上で予算申請するメリット>
- 過去のリニューアルを基準とした低予算リニューアルを防ぐことができる
- 予算と実制作の差異を少なくでき、追加予算の申請を最低限で抑えられる
- 予算内で何ができて、何ができないかを事前に把握できる
- 社内ヒアリングの上、必要な機能を盛り込んだ形の予算で申請できる
Webサイトリニューアルにおける予算獲得の失敗例
【CASE1】前回と同じ予算で失敗
10年ぶりのリニューアルが決定し、簡易的なRFPで5社に提案依頼。予算は前回のリニューアルと同程度だろうと、400万円程度で申請していた。しかし、ほとんどの制作会社が800万~1,000万円での提案となり、予算感が大きく上振れ。追加予算が取れず、プロジェクト自体が流れた。
【CASE2】システム面での失敗
経営企画室にて既存サイトから分かる範囲をもとにRFPを作成・予算申請し、制作会社を選定。実制作時に現場意見を集約すると、予算申請時に無かった要望・要件が数多く判明した。結果、1,000万円以上の追加予算が必要となり、リニューアル自体が翌年度に先送りされた。
見積もり額を増減させるポイント
これら失敗例からもわかるように、見積もり依頼時には以下4つのポイントを把握しておく必要があります。
■制作ページ数
何ページ制作するか、言語数をどこまで対応するかなど、ページ数の純増が費用感を左右します。
■Webサイトの機能性
スマートフォン対応、SSL対応、文字サイズ変更機能、サイト内検索、アクセシビリティ・ユーザビリティ設計等、過去対応していない機能性を実装する場合は、その分費用が増えます。
■システム変更
商品管理システムなどを導入する場合、通常のサイト構築よりも予算がかさみます。一見簡単そうに思えても実装が難しく費用がかかるケースもあるため、注意しましょう。
■セキュリティレベル
採用するCMSのセキュリティレベルはどの程度必要か、情報システム部門として追加セキュリティ要件があるかどうかは、企業によって差が出ます。担当部門と必ず事前にすり合わせましょう。
予算申請時に知っておきたい5つの心得
1.社内での事前要望把握は確実に行おう
Webサイトは、ページ数やシステム仕様の変更で大きく費用が増加します。特に営業関連のシステム追加は大きく費用がかかるため、事前に確認しましょう。
2. リニューアルへの理由付けをしよう
社内へ予算申請する際は、なぜリニューアルが必要で自社にどんなメリットがあるか、決裁者へ明確に説明できるよう準備しておきましょう。
3. 予算申請時の見積は複数社から取ろう
事前見積を懇意の1社からのみ取得すると、過去に把握している与件のみの換算で出てくるケースも。必ず複数社から取って妥当性を精査し、一番高い価格をベースに初回申請を行いましょう。
4. 更新費・保守費用も複数年で計画しよう
月額費用は各社・各CMSで異なり、対応範囲や更新のしやすさもバラバラ。サポート・運用保守対応なども含めて、総合的な判断を行うことが重要です。同時に3~5年間利用した際の合計価格も比較し、コストパフォーマンスを算出しましょう。
5. 余裕を持った納期と見積計画をしよう
欲しい内容・機能は多めに盛りこんでおき、余裕を持った予算を申請しましょう。また、無理な納期は工数増加を招くことも。余裕あるスケジュールを立てることで、追加予算の発生を低減することもできます。
RFP作成と予算感の把握は1セットで対応しよう
RFP作成と社内予算の申請は、要件定義フェーズの2大イベントです。切っても切り離せない内容のため、流れの中でどう連動しているのかを理解し、1セットで対応することが重要となります。
Webサイトリニューアルをより実りあるものにできるかは、要件定義フェーズでいかに設計するかによって決まるといっても過言ではありません。じっくり時間をかけて社内調整を行い、プロジェクトを進めるようにしましょう。